by せっちんさん

(せっちんさんが私の拙い文章を読んで、わざわざ東京から薬局を訪ねてくだ
さいました。残念なことにその時既に薬局は閉店され、お引っ越しされた後で
したが、この家に住んでいた友人は、絵をとても喜んでくれました。
2004.3月

祇園の小さな薬屋さん
  
 
 今日は、大切な友達の家へ行って来ました。彼女の家は祇園の街にある小さな薬局です。
南座から四条通をぶらりぶらり歩いて、八坂神社の赤い鳥居の少し手前を折れた所にあるこのお家は、築100年も経つ京都の町屋。
長い間彼女のお母さんが営んできた薬局には、昔懐かしい”炊事場”があり、昔理科室で見たようなお薬のビンがたくさん並んでいます。

 お店の奥にある和室で彼女と話しているとお客さんがやってきます。
その度に出ていく彼女とお客さんの話し声を聞くともなしに聞いていると・・・。
歯磨きを買いに来たおばさん、ドリンクをグイッと飲んでいったおじさん。
愛想の良い彼女とお客さんが話す声は、どこかのんびりしていて暖かい心(それだけで元気になれてしまいそうな)の行き交いを感じます。
あるおばあさんは、彼女にお水を入れてもらい、お薬を一包服用して帰られました。
お薬を一包だけ買えるなんて知らなかった私。昔は、自分のために調剤してもらったお薬を、こんな風に薬局で飲んで帰る人がよくいたのだそうです。
 
 薬は”ドラッグストア”で会話もないまま購入してしまうことが多いのが近頃の私たちです。大きな病院で長い間待った後、ほとんど会話もないままあっという間に診察が終わり、また長い時間待ってもらう大量の薬。
小さな薬局で暖かい会話と共に服用して帰る一包の薬。
・・・あのおばあさんは、風情ある祇園の街でさりげない日常を積み重ね、ちょっとしんどいときはこの薬局で一包のお薬を服用して、また元気に時を紡いでこられたのでしょう。

 彼女の家へ行った帰り道、心の中で繰り返します。
”おかあさん、がんばって薬局続けてください。
あのままのお店、続けてください!”

”レトロ大好き。古いって素敵!”  (02.02.04.Mon)

by せっちんさん
こんな雨の日には           


 日は朝から雨。
病室の窓から、彼と彼女も降りしきる雨を見つめているでしょうか。
 
 二人の結婚式からもう8年が過ぎました。
真面目で優しいスポーツマンの彼と、ぷっくりしたほっぺが愛らしい明るい彼女は、同じ職場で知り合い、けんかばかりしながらもしっかり愛をはぐくんで・・・。
 結婚式当日の二人は、未来への希望と幸せにキラキラ輝いていて、羨ましいぐらいでした☆ 
なのに、この二人の一緒に歩む人生の半分以上が、彼の病気との闘いの日々になるなんて・・・。
 長い間献身的に看病してきた彼女は、今彼の隣で寝起きをしています。
心も体も疲れているはずなのに、いつも明るく笑っている彼女。何が彼女を支えているのでしょう。
彼を支えているのは間違いなく彼女の存在。
そして彼女を支えているのは、彼が生きていると言うこと!
過酷な運命の中、こんなに暖かい愛情が二人の間に存在し続けているのを、神様は見ていてくれるのでしょうか?

 いつもいつも二人のことは忘れていないけれど、時間がゆっくり流れる今日みたいな雨の日は特に、神様に問いかけてみたくなるのです。(02.01.21.Mon

                   


(みんなの願いも虚しく、2002年2月11日朝、彼は36歳の短い人生を終えました。
バレンタインデーの日がお葬式。
遺影にチョコレートをお供えする彼女の姿が、せつなかった・・・です。)