Photo by Canaria-san

マイウェイ
 
 
娘がお腹にいるとき、電子オルガンの講師としての私は、少し焦っていました。
子供が産まれたら、もうオーディションを受けることもできない・・・産む前に早く次のオーディションに受からなければ・・・そんな思いが強かったのです。

 本来二週間に一回でいいレッスンを毎週にしていただき、だんだん大きくなってくるお腹を抱えて、先生の所に通っていました。

 オーディションの自由曲として選んだ曲が,"マイウェイ”でした。
筆記テストは無事合格し、課題曲のテストも何とか終了。

さあ、次は自由曲の演奏です。緊張のうちにその時はやってきました。
狭いオーディションルーム。背後には二人の試験官。
音色の設定、リズムの設定・・・。
マタニティウェアの私の緊張は、お腹の中の娘にも伝わっていた・・・?

設定ができました。
何度も何度も練習したこの曲を弾きはじめます・・・。


あ〜!何と言うこと!
テンポが遅すぎる・・・!

もしかしたら、すぐに設定し直して弾いたら良かったのかも知れません。
でも、その時の私は"弾き直しはダメ!とにかく前に進むしかない!”・・・そう思いこんでいました。
緊張のためか遅い遅いテンポにセットしてしまったリズムボックスに合わせて、超スローテンポのマイウェイを演奏し続けました。
もちろん、不合格はしっかりと自覚しながら・・・。


無念のマイウェイ。
でも、音楽にひたむきだったあの頃の私を思い出させてくれるマイウェイでもあるのです。