高校生も卒業式を残すだけとなった桜がつぼみを結び始めたある日、受験した大学からの電報を受け取った。
「サクラチル」 そこにう打たれてあった。 「よっしゃ」 気合いを入れ、電報をポケットにねじ込むと、僕はさっそく浪人としての準備に取りかかった。 まずは新聞配達で貯めておいた金をおろし、必要と思われる参考書類、問題集を買い集めた。次いでスポーツ店へ行き30リットルのリュックに、寝袋、簡単な自炊道具を買った。 そして、卒業式を終えると、参考書をリュックに突っ込んで旅に出た。 明らかに本来の浪人の意味をとり違えていた。 |
次の年の春、再び受け取った「サクラチル」の電報を見て、 「えらいこちゃ」 そう思ったが、しばらくするとこりもせず、また旅に出た。 そして次の年も再びサクラは散り、ようやく反省はしてみたもののほとぼりが冷めると、やっぱり旅に出た。 |
さらに次の年送られてきた電報の「サクラチル」には、さすがに3日間寝込んだ。 「ギネスに挑戦してんじゃないんだ。働け!」 周囲の声に、逆に意地となってやっと始めた本格的勉強。 朝夕のアルバイトの時間は除き、1日の12時間を学習に当て、食事にいたるまでを 全てスケジュール化した。 決めたことは守る。守らない時は厳罰を! そう決意した。 |
北野、さくら通 |
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このような桜のアーケードが300メートル以上続く。 この季節、ちょっと遠回りしてもこの道を通ってしまう。この中に入り込む時、車も人も、そして人の心までもが、桜に染まる。 |